吹奏楽 マーチング ダンシング

パフォーマンスで、感動を共有できることは、、、幸せだ

連載 吹奏楽とロック 3

 

 

突然、、、 親戚のおじさんがオーディオをもってきた!

当時の、、、 高卒の初任給より高いという代物である。 引っ越しをするので邪魔なのだそうだ。

「音楽をやっているなら使うだろうと思って、持ってきたよ。」

聴いている時間がない。 何てことは言わないで、 ありがたく頂いておいた。

音楽をやっている者が、「音楽を聴いている時間がない」とは、これ如何に。。。

しかし、、、 良いオーディオが、あればあったで、、、 ロックを聴きたい~~!

というわけで、、、 相棒から、ロックのLPを一枚、借りた。

ところが、、、 ここで、問題が発生!

私が、聴くことが出来る時間帯は、、、
毎日、部活があるので22時以降なのだが、、、
家族にとって、完璧な騒音であるロックを、オーディオで普通にならせる時間帯ではない。

住宅事情が良くなかったので、フスマ一枚となりが親の寝室だった。だから、23時になると、完全にゲームセットである。

22~23時に限られるのであるが、、、 それも、蚊の鳴く程度の音量でしか聴くことが出来ないのだ。

仕方なく、なけなしのこづかいで、安物のヘッドフォンを購入。 目の前に、でかいスピーカーがあるのに鳴らすことが出来ないで、、、夏は、耳に汗をかきながら聴くことになった。

ヘッドフォンを買ったので、その分、レコードを買うことが出来なくなった。相棒だけが頼りである。

疲れきった体で夜遅く聴くのも問題だった。二・三曲も聴いていれば、気持ちよくなって寝落ちしてしまう。

結局、一枚のLPを、相棒に返すのには一ヶ月はかかってしまう。 相棒も事情は、良く分かっているので、嫌な顔をしたことはなかった。

 

Cream -"Sunshine of Your Love" Live 1968    

https://www.youtube.com/watch?v=oPYot0Wk7UY

 

 私が、二年生で挑んだコンクールも、全国の壁にはばまれた。 例年通り、関東で敗退したのだ。

そして、このコンクールの後、私にとって、ある出来事が起きた。定期演奏会を待たずして、私は転校することになったのだ。

しかし、転校によって、、、 コンクールに『特化』した吹部を失うことも惜しくなかったし、吹奏楽そのものから離れることにも躊躇しなかった。

だから、転校先の高校では、吹奏楽をやるつもりはまったく無かった。

吹奏楽のありかたに否定的だったのだ。。ジャズのビッグバンドもどきや、弦楽器がないのに交響楽をやったりしている、、、その、サウンドそのものに魅力を感じなくなってしまったのだ。

でも、、、 魅力を感じなくなったのは、他のところに意識が行ってしまったのが、本当の原因だろうと思う。

これらの事、すべては、ロックとの出会い! その事に起因している。

私は、当時の、口先だけ威勢のいい日本のロックではなく、ツェッペリンジミ・ヘンドリックスなどのサウンドに、純粋に取りつかれてしまったのだ。

転校すると、当然のごとく吹部から誘われた。単純に、人員も欲しかったのだろうが、、、私の吹奏楽の経歴が、血統証のようになってしまっていたので、人を入れ替えながら熱意たっぷりの、誘いの波状攻撃を受けた。

最後には、職員室に呼び出されて、教師の説得を受けるはめになったが、、、 私の意思は変わらなかった。

 

 Cream - Crossroads [Live at Winterland 1968] HQ   

https://www.youtube.com/watch?v=MF5fQXVZGug


私の中には、すでにビジョンが出来上がっていたのだ。 目指すのは、ロックバンドで修行を積むことであるが、、、 その前に、個人練習である。

だから、転校して最初にしたことは、、、
バイト探しである!

楽器とレコードを入手しなければならなかった。吹部を失うと同時に、楽器も失っていたのだ。

バイトは、すぐに見つかった。 バイトを、すぐにでも、やめなければならない同級生がいたのだ。

繁華街のラーメン屋で、17時~22時の5時間で、週6日だ。
そして、、、 なんと、それだけやれば、高卒の会社員の初任給よりも高いバイト代をもらえる。

今では考えられない事だ。 経済が急上昇していて、とんでもない人手不足だったのだ。この四年後には、高卒の初任給は三倍になっていた。 インフレも激しかったが、、、働く側にしてみれば、いい時代だった。

このバイトの時間帯を考えると、、、  学校に許可される事はなさそうであったから、無許可で始めることにした。 バレたら、やめるつもりだったが、最後までバレなかった。

バイトを始めてみると、、、
雇われ店長が、「食い物屋で腹を空かしていたら変だから、手があいたら好きなものを、好きなだけ作って食べていいぞ。」と言ってくれた。 最高のバイトである!
そして、良き時代だった。

閉店は24時であったが、、、 繁華街のラーメン屋であるから、遅い時間のほうが混んでいた。 私が帰った後の22時以降のバイトが見つからなかったので、店長は大変な過重労働になっていた。

店長が気の毒なので、私は、18時~24時に、バイト時間を変更することにした。だから、給料日には、初めての大金を手にすることになったのだ。

私は、高校を卒業するまでの間、、、 学校の経費はもちろん、私にかかわるすべてを、自分でまかなうことができた。家からの、出費はゼロ!ということである。

私は、自分でお金を稼ぐ喜びを、初めて経験した。しかも、それだけではなく、私にしては、意外な喜びも発見したのだ。

その喜びとは、人様のために働くという事である。

ラーメンを食べている瞬間、、、 人は、幸福感や平常心の中にいる。その瞬間に、否定的な心理状態の人はいない。

給料をもらいながら、人様の役に立てるのだ。とても、心地の良いものだった。

私は、、、、 どうして、今まで労働の喜びというものが、この世にあることを知らなかったのだろう。労働の大切さは、知識として頭に入っていたのではあるが。。。働く喜びは、誰からも教わった事はなかった。

私の知識の中には、、、 学業は自分の将来のためであり、労働は、自分と家族の、収入のためというものしかなかった。

この時の、私の喜びと同じものを感じていない人が多いのか、、、 そんなことは、当たり前すぎて、口に出す気にもならないのか。。。

きっと、この二種類の人達が混ざっているのが、この社会なんだろう。

 

 Led Zeppelin - Immigrant Song (Live 1972) (Official Video)   

https://www.youtube.com/watch?v=RlNhD0oS5pk

 

最初の給料日に、、、 いきなり大金を手にした私は、、、 早速、楽器の購入である。

最初の給料で買ったのは、、、安物のエレキギターと練習用のギターアンプである。

私は、、、 ロックを理解するには、ギターの理解が必要だと考えたのだ。 確実に理解するには、ギターを弾けるようになることが、一番の近道である。

私は、学校から帰ると、ギターの基礎練習。それから、LPレコードを片面だけ聞いてから、ラーメン屋に出勤する。

ラーメン屋で最初にすることは、好きなラーメンを自分で作って食べること。そして、「喜び」の労働が始まる。20時頃には、店長が、まかないを作ってくれるので、また、食べる。そして、忙しい後半戦に突入だ。

こういう、毎日だった。

 

Jimi Hendrix 'Voodoo Child' (Slight Return)

https://www.youtube.com/watch?v=IZBlqcbpmxY