連載 吹奏楽とロック 4
エレキギターを購入した。
安物ではあるが、、、 私が、今まで、自分のお金で買い物をした中では、桁違いの高額であった。最初のバイト代の80%が消えた。
楽器を手にいれたので、、、 早速、基礎練習である。私は、ギターを弾いたことがなかった。
一度も。。。
しかし、ロックを理解する程度なら、出来るようになる自信はあった。
私は、、、 とりあえず、自己流で、、、 というか、吹奏楽流で練習をスタートした。
吹奏楽では、「基礎練習が命」であり、最初に、基礎練習に時間をかけることが、最終的には近道になることを体験していた。
まずは、ピッキングの練習だ。 次に、スケール練習。 そして、コード(和音)、、、だが、コードって、どうやっていいのか分からない。
早速、楽器屋さんに行ってみた。楽器屋さんの書籍コーナーである。
書籍コーナーでは、「ギター コード ブック」というのが、すぐに見つかった。タブ譜といって、ギターの指板の絵があって、そこに1~4の番号がある。人差し指は1で、、、 どの指でどこを押さえればいいのか、一目で分かるようになっている。
そして、この日は、もうひとつ購入したい物があった。
ロックギター用の教則本である。吹奏楽では、基礎的な力をつけるために、教則本は必需品であった。
教則本とは、、、 ほとんど、文章はなく、楽譜だけの本で、、、 その楽譜を、ひたすら繰り返し練習すれば、、、自然に、基礎的な力がついてくるというものだ。
ところが、探しても見つからない。。。 ジャズギター用はあるが、ロック用はなかった。
店員さんに聞いてみた。 すると、、、
「ロック用は、今のところ、ありません。あっても、売れないと思います。ロックのお客様は、楽譜を読めない人が多いですし。 皆さん、、、好きなアーティストを、耳でコピーするんですよね。」
「でも、コピーしても、技術がないと弾けませんよね。。。 教則本がなくて、どうするんでしょう。。。」
「どうしてるんでしょうね。。。お知り合いで、上手な人に聞いてみたらいかがでしょう。」
で、、、 とりあえず、教則本はあきらめるしかなかった。ジャズギター用はあったが、、、 私には、ジャズ用がロックに対応できるかどうか判断できなかった。
CCR - good golly miss molly
https://www.youtube.com/watch?v=c6o48KxbDww
しかたなく、「上達法」なるものが書かれたものを、立ち読みしてみた。
すると、、、
基礎練習とは関係ないことであったが、、、
「ブルース・コード進行」というのが目についた。
特殊な和音進行であるが、ロックやブルースで、時々、使われていて、即興演奏では便利だと書かれている。
keyC (ハ長調) の場合、、、
C C C C F F C C G F C G の12小節である。
別の、表現では、、、
ドミソ×4小節、 ファラド×2小節、 ドミソ×2小節、 ソシレ×1小節、 ファラド×1小節、 ドミソ×1、 ソシレ×1小節
最初の C C C C は、C F C C も、ある。
最後の G F C G は、G F C C も、ある。
という12小節で、これを何回か繰り返して一曲になるという。
たしかに、特殊だと思った。いきなりドミソからファラドに進行することは、吹奏楽では、無かったように思う。
そして、次のページにも興味深いものがあった。「ブルーノート・ペンタトニック・スケール」である。
ブルーノートは、ミ♭・シ♭で、、、 ペンタトニック・スケールは、5音階のことである。
具体的には、『 ド ミ♭ ファ ソ シ♭ 』 の5音階である。
こちらの方は、、、ブルースに関係があるらしいが、、、何故か、なにも解説がなかった。
私は、、、 これらが、不思議なものであることは、感じたが、、、これだけでは実感がわかなかった。
私は、、、音階のある楽器は、ほとんどやったことがないので、楽譜を見ても、頭の中に和音やメロディがうかんでこないのだ。
中学のマーチングバンドでは、パーカッションにいても、スネアの機会が多く、マーチングベルをやったことがなかった。高校では、、、一曲だけ、「組曲惑星」の「木星」で、スネアとグロッケンを兼任でやっただけだった。
だから、何か音のでる楽器がないと、「ブルース コード 進行」も「ブルー ノート スケール」も、イメージすら、うかんでこないのだ。
覚えてしまったので、この上達本は買わなかったが、、、 急いで、家に帰ってギターで試してみたくなった。
楽器屋さんを出ようとすると、、、 有るじゃないか! ピアノが。。。
早速、ピアノ売場で試してみた。
「ブルース コード 進行」を、、、 八分音符で、2拍目と4拍目をアクセントにして弾いてみた。
やはり、ドミソからファラドに進むときに、いきなりガクッと変わってしまう感じで不自然に感じた。自然の流れではなく、、、たったの4小節で、そこに境目ができてしまう感じだ。
やはり、特殊なコード進行なのだ。
そして、9小節目で、突然、急激に盛り上がり12小節目で、曲が終わってしまう感じだ。まるで、12小節のコンパクトな曲のように感じる。
12小節の中に、起承転結が備わっていて、、、 普通なら、32小節ぐらいでやることを、コンパクトにやってしまうという事らしい。
あとで知ったのであるが、、、 この「ブルース進行」は、、、 アメリカの、黒人奴隷達が、、、 白人的な音楽をやろうとした、その過程で発明したものだった。
次は、四分音符で速いテンポで弾いてみた。
あっ! ロックンロールだ!
もちろん、私が弾いているのは「もどき」である。
ロックンロールやロカビリーは、「ブルース進行」が多いのだ。
Little Richard - "Long Tall Sally" - from "Don't Knock The Rock" - HQ 1956
https://www.youtube.com/watch?v=en3JhLxUL6k
Chuck Berry - Johnny B. Goode [HQ]
https://www.youtube.com/watch?v=I8JULmUlGDA
https://www.youtube.com/watch?v=lzQ8GDBA8Is
実は、、、 ツェッペリンの初期の曲の70%は、この「ブルース進行」を変化させたものなのだ。
では、、、 「ブルーノート スケール」は。。。
ん! 5音階を、順番に弾いただけで、何かのメロディみたいに聴こえる!
でも、♭があっても和音と合うのだろうか。。。
左手で和音。右手でスケールを弾いてみた。
ドミソ・ファラド・ソシレを、試しに弾いてみたが、、、 どれも、合ってしまう。。。
では、、、 左手で「ブルース進行」右手で「ブルーノート スケール」。。。
合っている! 「ブルーノートスケール」は「ブルース進行」では、どのコードでも、どのように弾いても合ってしまう。
では、、、右手の「スケール」をリズミカルに、抑揚をつけて。。。
まるで、ピアニストになって、アドリブを弾いている気分である。 もちろん、ロックにも、ブルースにも、「もどき」にもなっていないが。。。
でも、スイングしてみると、ジャズっぽくなる。 ジャズとも関係があるらしい。
やはり、後で分かったことであるが、、、
ブルーノートも、アメリカの黒人の発見だった。
偉大な、大発見である!
すると、、、 後ろから、店員さんの声が。。。
「ピアノをなさるんですか。。。」
「すみません。勝手に弾いて。 ピアノは弾けないんです。」
「また、またぁ~。今、即興演奏、してたじゃないですか。」
「いや~。ほとんど、デタラメです。」
「じゃ、そういうことに、しておきますね。ピアノの試し弾きは大丈夫ですので、いつでもどうぞ。」
デタラメに弾いただけで、即興演奏をしていることになってしまった。
私にとっても、『大発見』であった。
Jeff Beck featuring Eric Clapton - Little Brown Bird 1080p
https://www.youtube.com/watch?v=dSnsyzfhY_E